カトリックの総本山であるヴァチカン宮殿。そこには500年もの歴史の中で歴代の教皇たちが収集してきた芸術作品が収められたヴァチカン美術館がある。そのヴァチカン美術館に、世界で初めて4K(Ultra HD)3Dカメラが入った。精緻な映像には世界の美術史における傑作の数々が、かつてない形で現れる。

 映画の撮影には4ヶ月が費やされた。最新のテクノロジーにより、彫刻はもちろん、40点以上の壁画もあたかも奥行きがあるかのように浮かび上がる。臨場感ある立体映像で観客は実際にヴァチカン宮殿にいるかのような感覚を味わえる。

 プロダクション・チームのスタッフは芸術に造形の深い40名のイタリア人。彼らは素晴らしい装飾が施された回廊や部屋を延べ3000キロも歩き、年間500万人を越える来館者を迎える美術館の壮大な魅力をとらえた。

「ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口」に登場するのはラファエロの「アテネの学堂」、システィーナ礼拝堂を飾るミケランジェロの「アダムの創造」や「最後の審判」。そのほか、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ジオット、カラヴァッジオらルネサンス期の巨匠たちに加え、ゴッホ、シャガール、ダリ、フォンターナら近現代の芸術家の作品も見られる。案内役はヴァチカン美術館館長のアントニオ・パオルッチ教授。親しみやすく印象的な語り口で、傑作のすばらしさを細部まで解説してくれる。他では味わえない、感動の旅へ導いてくれるのだ。

 芸術作品は芸術家の精神を表現する崇高な手段であることをこのドキュメンタリーは教えてくれる。キリスト教徒のジオットやユダヤ教徒のシャガールらの信仰、苦悩するサルバトール・ダリから優雅なラファエロまで、芸術家の信念から生み出された力強い作品の数々を見ることができる。

 ヴァチカン美術館館長は言う。「ヴァチカン美術館は常に複数形で語られます。歴代の教皇が人間の芸術性をあますところなく残したいと望み、それぞれに築き上げた美術館の複合体だからです。ヴァチカン美術館では足の赴くまま、ゆっくりと鑑賞してください。行く先々で感動に身を任せれば、この美術館に集められた人類のすばらしい物語と運命とが織りなす世界に足を踏み入れたことを実感できるはずです」
 ローマ中心部からテヴェレ河を渡ったところにあるヴァチカン市国はカトリックの総本山であり、カトリック最高位の教皇の住まいである。その中心、サン・ピエトロ大聖堂はローマで殉教した初期キリスト教の聖人、聖ペテロの墓とされる場所に建っている。

 ヴァチカンが教皇の住まいとなったのは15世紀のこと。当時のイタリアは小国に分かれており、各国が覇権を競っていた。15世紀末、もっとも優勢だったミラノ公国にフランスが侵入、力を失ったため、ヴァチカンの教皇庁が首位の座につく。教皇はヴァチカンの整備に取り組み、その整備事業に参加するため、ローマにはミラノからブラマンテ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、フィレンツェからミケランジェロ、ラファエロといった才能豊かな芸術家たちが集結した。

 ヴァチカンではそれまで建っていた聖堂を壊し、1506年からブラマンテのプランに基づく新しい聖堂の建設を始める。聖堂の設計・建設は後にラファエロ、ミケランジェロに引き継がれ、17世紀に現在のものが完成した。

 サン・ピエトロ大聖堂の脇にあるシスティーナ礼拝堂は15世紀に教皇シクストゥス4世が改築したもの。1503年に即位した教皇ユリウス2世はこの礼拝堂の天井画をミケランジェロに依頼、天井画は教皇の死の3ヶ月前に完成する。

 またユリウス2世は、システィーナ礼拝堂に続く居室や執務室の装飾をラファエロに依頼、「ラファエロのスタンツェ」が作られる。

 ユリウス2世の死後、レオ10世の次に即位したクレメンス7世はミケランジェロにシスティーナ礼拝堂の壁画「最後の審判」を依頼。クレメンス7世の死後、その事業を引き継いだパウルス3世の在位時に完成した。

 18世紀後半から歴代の教皇たちにより、古代美術作品がローマから流出するのを防ぐため、現在のヴァチカン美術館の整備が始まる。「ピオ・クレメンティーノ美術館」、「キアラモンティ美術館」、フランスに流出した美術品の返還を機に作られた「ブラッチョ・ヌオーヴォ」や「絵画館」が作ら れた。1963年〜78年に在位したパウルス6世は同時代の宗教美術をコレクション、ゴッホ、フォンターナなどが加わった。